私は,刺繍と蝋纈染めで主に「地元の風景」を表現しています。

糸が表す独特の緊張感,裏返したときに見える偶然の形の面白さ,染料、水、重力、時間を使って生まれる色,蝋の発色を強める質感に魅かれます。

蝋や糸の力を借りてできる表現は地元,徳島の一見では気づかないよさを表してくれます。

素材が作る質感と徳島と私がつながり,残るものが私の作品です。

 

染めを続ける以上,光による退色は受け入れなくてはなりません。しかし,飛鳥時代に聖徳太子の死を悼んで作られた天寿国繍帳は色あせた今もなお,残された妻の思いを乗せて存在し続けています。光の中で作品は朽ち始めますが,作品がなくなるその時まで,この徳島の風景を発信し続けたいと考えています。